▲写真左よりBEYOND CAFE前代表取締役の杉岡侑也、BEYOND CAFE新代表の伊藤朗誠、RAIZAPグループ株式会社 人事本部 本部長 玉上宗人様
ライザップで人事統括を務める玉上宗人さんは、1991年に大手金融機関に入社、その後広告会社での勤務を経て、2007年に株式会社ニトリに入社。店舗勤務やエリアマネージャーなどの経験を経て、2015年には同社執行役員、17年からは常務取締役を担うなど、異色の経歴を歩まれています。
今回はそんな玉上さんに、BEYOND CAFEで代表を務めてきた杉岡侑也、新代表の伊藤朗誠が「若手育成において心がけていること」や「企業として成長し続ける秘密」についてお伺いしました。
伊藤朗誠(以下、伊藤):ライザップさん、今ものすごい勢いで伸びていらっしゃいますよね。急成長の秘訣ってどこにあると考えていますか?
玉上宗人様(以下、玉上さん):そうですね。あくまでも、いくつかの会社を渡り歩いてきた私の感覚ですけど、PDCAの中でわが社はとにかく“DO”が強い会社なんです。すばらしい計画があっても、“DO”に全力をささげられていない会社って多いと思うんです。そんな中で“DO”にこだわることこそがライザップの一番の強みだと思います。
杉岡侑也(以下、杉岡):いくらリーダーが言い続けても、社員が納得しなければ“DO”ができる組織であり続けることって難しいと思うのですが、そうであり続けるための要因ってなにかあるんでしょうか?
玉上さん:やはり環境だとか、雰囲気づくりですかね。今、グループでいうと社員だけで7200人くらいのメンバーが所属しているのですが、ボディメイク事業に所属している2000名のメンバーには「とにかくやる」というカルチャーの浸透ができています。
残りの5000名には会社都合で図らずもグループに入ってくることになったメンバーもいるので、「なにライザップって」という感じももちろんあります。なので、その人たちにもライザップマインドを理解し、行動してもらえるかということは大切にしています。
伊藤:ライザップマインドとありましたが、具体的にどのようなマインドを指すのでしょうか。
玉上さん:オリジナリティを大切にすることですかね。やはりサービスを提供するB to C産業ってお客様から見た時に、どこも似たり寄ったりで魅力を感じにくい部分もあります。
ライザップは「なぜライザップでなきゃいけないのか」とお客様自身に説明していただけるような存在でありたい。お客様目線でとかいう軽い言葉ではなく、利用していただける方のために行動すること、考えるだけじゃなくて行動する。それをマンツーマンで還元するというのがオリジナリティであり、社員にはそこを大切にしてほしいと思っています。
杉岡:たしかに。世の中利便性を求める傾向にあるものの、人間ってそこに慣れてしまうとオリジナリティを求めているのかもしれない。
玉上さん:まさにおっしゃる通りだと思いますね。技術が進みAIが当たり前にはなってきたけど、それはあくまでツールであり、最終的に行きつくところは人であり、オーダーメイドなのかなと思います。
あくまでも僕自身の考えだけど、人間の欲はきりがないので、一人ひとりのお客様をどれだけ満足させていけるかで、お客様に対して与えられる付加価値の数を増やしていきたいんですよね。
杉岡:“DO”をやりきる組織の特徴って、リーダーもそうですけど、一人ひとりの人材が要だと思うんですよね。社員の教育という面で心がけていることってなにかありますか?
玉上さん:先ほどお客様一人ひとりに対して、オーダーメイドをつくっていけるかということをお話させていただきましたが、ライザップでは、社内の教育に対しても、オーダーメイド型なんですよね。多くの企業の場合は、計画的にベースの現場を経験してもらったうえで、現場を理解した人間を適正に教育していく、それで15年ほどかけて、商品なら商品、PRならPRのプロを作っていきます。
しかし、ライザップの場合は、プロフェッショナル集団になるのに、学歴や年齢は関係ない。スポーツの世界で、力がある人がスタメンになれるような組織を目指しています。挑戦したい人には、挑戦できる環境を。あらゆる場面で「やれると感じたら、まず行動」と言い続けています。
杉岡:「誰にでもチャンスがある環境づくり」は言葉では言えても、意外と実現するのって難しいと思います。ライザップ社内では、そのような環境や制度はあるのでしょうか?
玉上さん:まだ事例としては少ないものの、全社員を対象にした新規提案イベントや、内定者に事業提案してもらう企画を行なっています。新卒で入社した社員にも、可能な限り新規事業に携わらせたいと思っているのですが、まだそこに関しては、環境づくりが不十分かなと感じています。
実際には、入社して間もない人材がすぐに部長になることは難しいです。しかし、会社としては、経験のない若手が自分でビジネスを興していくことを推奨していて、環境づくりを1日でも早く実現したいんですよね。
多くの企業がやるようなキャリアプランの階段を一段一段と登っていく王道スタイルである必要はありません。チャンスを与えて、それをサポートしてあげる、例えば挑戦したい人に対してはビジネスとかM&Aのノウハウも教育する環境を促進していきたいんですよね。
伊藤:新卒の子にもそのような機会が与えられるんですね。
玉上さん:そうですね。実際に今年入ったメンバーだけで、新規事業プロジェクトを走らせたりしています。一応教育の観点から、人事部の直轄にしていますが、ビジネスに関しては、プロダクトマネージャーやチーフにアドバイスをもらいながら、社長プレゼンを行ったり、グループ企業内でテスト販売をしたりしています。毎週1回、そのメンバーとプロダクトマネージャーと僕でミーティングを行いますが、僕たちは助言をするだけ。判断は自分たちでするようにと、手を挙げやすい環境をつくるようにしているんですよね。
杉岡:若手に自ら手を挙げさせる環境って大切ですよね。
玉上さん:そう。若手に「やりたい」って言わせて、言ったからには自分でやりきらせるという環境をつくる。20代の失敗なんて、今後のキャリアを考えた時に痛くもかゆくもないし、だめだったらやめればいいんですから、たくさん失敗したほうがいいんですよ。
失敗を繰り返して、辞める決断をさせる力も養っていくことって大切だと思っているんですよ。というのも、人間って「やる」決断よりも、「やめる」決断ができないから。でも、ビジネスの世界では、ドライに判断をして、巻き込む人間に対しても「ここがクリアできなかったら解散ね」とちゃんと伝えなければいけません。
やり方はそれぞれに任せるけど、失敗することまでを養わせるのが、正しい環境なんだと思うんですよね。これに関しては、なにも若手に限った話ではなくて、全員がそうであるべきだと思っています。挑戦を実践して、実行する、失敗しそうになったらやめる決断まで自分で責任を負う。それが、瀬戸社長がよく言う「やりきる力」なんだと理解しています。
伊藤:挑戦する環境を活かす人材と活かせない人材っていると思うんですけど、これだけ豊かな環境の中で、バンバン活躍していける人材かどうかを、新卒のエントリー時点で見極めるポイントってありますか?
玉上さん:正直、やらせてみないとわからないです。ただ、強いてあげるとすれば、僕が新卒採用の面接をやるときに見ているのは、柔軟性があるかないかです。こだわりの強い人は、一つの世界にしか目がいかなくなっちゃうから、成長中の企業で成功することは難しいんですよね。環境がどんどん変わっていく中で、変化に耐えられる人間かどうかというのが大切ですね。
杉岡:手段に対するこだわりはいらないけど、アクションや目的に対するこだわりはあった方がいいということですかね。
玉上さん:そうそう。なにかをやる時に、それを導入化することが目的になってしまいがちなのですが、そこはツールであって何をどういう風な数値に変えるかというところにはこだわらなければいけないです。
私は起業したことはありませんが、理念があって何かを変えたい、こういうことで役に立ちたい。そう思って会社を立ち上げるんだと思うんです。でも、そのうちに目的と手段が合わなくなってくる。そうなってしまい、成長が止まってしまう会社はよく目にします。
これは個人に対しても言えること。「なりたい自分」という理想は諦めちゃいけない。理想にはこだわって、そのためにはなんでもやるっていう覚悟を持つことが大切だと思いますね。
伊藤:さきほど、こだわりという話が出たと思うのですが、こだわりって「自分の実現したい世界を何が何でも達成する」という欲求が強いってことなのでしょうか?
玉上さん:そうですね。でも、そこの欲は私利私欲ではないと思っています。青臭いかもしれないけど、成功している人は「世の中を変えたい」とか、「こういう人の役に立ちたい」との欲求が強い。
具体的に言うと、お客様にとっての便利を考えて、そこを追及している企業はうまくいっているなと思います。お客様の声をクレームとして片付けてしまってはだめ。耳を傾けて、改善を重ねることで企業としても成長していきます。だから、そこに対して欲深い人は、リーダーとしての素質があるのではないかと思いますね。
杉岡:なるほど。玉上さんがついていきたいと思えるリーダー像ってそういう方なんですかね。
玉上さん:僕から見た、成功しているトップの共通点って“貪欲”ってことなんですよ。自分の欲望に対して、自分勝手ではないけど、わがままなんです。やりたいことを叶えるために、謙虚にみんなの話を聞いて、いろんな人を受け入れて、その人たちを使って、自分の欲望を叶えているんですよね。
杉岡:なるほど。そういう意味では、これから入社してほしい層も“貪欲”であることは必要不可欠なんですか?
玉上さん:そうですね。というよりも、会社から与えてもらいたい人は、入社しても来ても苦しいかな。実際、組織も自分の力で「何かを変えてみたい」とか、「チャレンジしてみたい」という人の集団になってきたので、もっと会社としてもそういう環境を整えられたら、いろんな可能性が出てくると思っています。
だって、従業員が7000人いたとして、その一人ひとりの『こうしたい』があったら、1つのゴールだとしても、7000通りのアプローチがある。それが、すべてビジネスに変えられるチャンスがあって、それを実践できるなんてポジティブでしかないと思うんです。考えるだけではだめ、7000人が“DO”する、そんな組織にしたいです。
伊藤:失敗させる環境を若い世代に対してこれだけ作っているのであれば、5~10年後には、元ライザップの起業家みたいな人がどんどん輩出されていきそうですね。
玉上さん:あるかもしれないですね。でも、僕としては、別に独立しないで、ライザップの中でやったらいいじゃんって思いますね。その方が、戻れる場所もあるから個人としての心の余裕もあるし、グループとしての価値も上がるし。将来的には、そういう環境を作れたらなと思います。
伊藤:教育っていう意味で、これだけ社員に対して学べるチャンスをオープンにしている環境って貴重ですよね。
杉岡:僕が、ライザップに初めて来たのって、ちょうど2年前くらいなんですけど、社内で流れていた動画で『人が変われるのを証明する』っていうのがすごく刺さったんですよね。なんだか、その時のことを思い出して身が引き締まりました。ありがとうございました!